市内の小中学生による「こがねいジュニア特派員」が鑑賞レポートを書いて発信!
ぜひご覧ください。(原文のまま、書き起こしています。)

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レポート「神田伯山独演会」

小金井市立小金井第二中学校 2年 反町佑

 今最もチケットが取れないといわれている講談師、神田伯山。今や講談界の押しも押されぬ大看板になろうという逸材だ。その逸材が、小金井にやってくる。そうなったら、もう行くしかない。自分は伯山先生のラジオを毎週聞いている。講談もよく聞く(専門は落語だが)。運の良い事に、今回はジュニア特派員として見に行く事が出来た。そして今、その会のレポートを書いている。どれくらいの長さになるかは分からないが、会の感想や根多の内容やら伯山のこれからやらについてつらつらと書き連ねていこうと思う。お目汚しですが、お付き合い下さい。

 一度、この小金井宮地楽器ホールで講談を聴いたことがある。その時聴いたのが、神田松鯉だった。他でもない、伯山の師匠である。演っていた根多は、季節もあって、「赤穂義士外伝 天野屋利平」。さすが人間国宝という芸を見せてくれた記憶がある。さて、弟子はどうなんだろう...と思っているうちに会が始まった。開口一番に続いて伯山登場。今回は仲入り前に二席、仲入り後に義士伝を一席。仲入り前に演ったのが、「阿武松」と「万両婿」である。この二席、共通点がある。それは、落語でも演じられているという事。そして、落語の方が有名なのだ。前者は同名で、後者は「小間物屋政談」という名で親しまれている。元は講談なのに。自分も落語でしか聞いた事がない。さて、どうなるんだろうと聴いてみると、やはり落語と講談の違いがはっきりと浮かび上がってきた。その違いをつくるものが、張扇である。張扇とは、講談師が釈台を叩くときに使うアレだ。落語には、張扇がない。その分、講談は物語の山場で盛り上げられる。客を引きこめるのだ。今日も、伯山先生の勢いの良い語り口とホールに響き渡る釈台を叩く音に観客は引きこまれ、気付けばお仲入り。

落語とはまた違った良さがあり、同じ根多でここまで変わるものかと思わされた。他の落語もある講談の根多を聴いてみようかと、一人思った。
 さて、仲入り前でもう満足なのだが、ここで問題が一つ。伯山が熱演しすぎて、時間がない。仲入り後は今日のメインと言っていい、義士伝だというのに。大丈夫なのだろうか。時間ギリギリで席に着く。そして、黒紋付に着替えた伯山登場。時間は延ばしてもらえたらしく、少しマクラを振ってから根多に入る。「赤穂義士銘々伝 南部坂雪の別れ」。一言で言うと、別れの噺だ(まとめすぎ)。というか、この赤穂義士伝全体が別れの噺なのだ。討ち入りに征く四十七士とその家族、友人、大事な人との別れを描いているのだ。義士達の人数だけ、別れがある。その一つ一つを描いたのが、赤穂義士伝なのだ。それを初めて聞いた時、初めて腑に落ちた気がした。自分はあまり忠義というものが好きではない。だから、赤穂義士伝というものもそこまで好きではなかった。だがそれを聞いて、そして伯山先生の「南部坂雪の別れ」を聴いて、そういった感情は消え去った。暗くなったホールにスポットライトで浮かび上がった伯山先生は、仲入り前とは打って変わった落ち着きようで、ホールの客を引きこんでいく。伯山先生は、この別れのストーリーを繊細に、そしてダイナミックに語っていく。涙が出そうになった。気がついたら場内は明るくなり、大拍手に包まれていた。ようやく、赤穂義士伝を好きになれた気がした。

 こうして会は終わった。ただただ、凄かった。だが、一つ心配な所もある。今でああ上手かったら、年を取ったらあの芸はどうなってしまうのだろうか。伯山が早熟でないことをただただ願うばかりだ。そして、もう一つ思っていることがある。伯山先生には、芸人でも、芸能人でもなく、講談師として生きていってほしい。講談師・神田伯山先生の今後のますますのご成長とご活躍をお祈りいたしまして、この特派員レポート、大団円でございます...。

(公演写真:藤本史昭)

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講談と落語に対するとても詳細なレポートを
書いてきてくれた反町くん。
原稿用紙4枚に書かれた力作に、熱い想いが伝わります

スタッフによるレビューは【こちら

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【こがねいジュニア特派員レポート vol.21】神田伯山 独演会 23. 12. 25

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レポート「神田伯山独演会」

小金井市立小金井第二中学校 2年 反町佑

 今最もチケットが取れないといわれている講談師、神田伯山。今や講談界の押しも押されぬ大看板になろうという逸材だ。その逸材が、小金井にやってくる。そうなったら、もう行くしかない。自分は伯山先生のラジオを毎週聞いている。講談もよく聞く(専門は落語だが)。運の良い事に、今回はジュニア特派員として見に行く事が出来た。そして今、その会のレポートを書いている。どれくらいの長さになるかは分からないが、会の感想や根多の内容やら伯山のこれからやらについてつらつらと書き連ねていこうと思う。お目汚しですが、お付き合い下さい。

 一度、この小金井宮地楽器ホールで講談を聴いたことがある。その時聴いたのが、神田松鯉だった。他でもない、伯山の師匠である。演っていた根多は、季節もあって、「赤穂義士外伝 天野屋利平」。さすが人間国宝という芸を見せてくれた記憶がある。さて、弟子はどうなんだろう...と思っているうちに会が始まった。開口一番に続いて伯山登場。今回は仲入り前に二席、仲入り後に義士伝を一席。仲入り前に演ったのが、「阿武松」と「万両婿」である。この二席、共通点がある。それは、落語でも演じられているという事。そして、落語の方が有名なのだ。前者は同名で、後者は「小間物屋政談」という名で親しまれている。元は講談なのに。自分も落語でしか聞いた事がない。さて、どうなるんだろうと聴いてみると、やはり落語と講談の違いがはっきりと浮かび上がってきた。その違いをつくるものが、張扇である。張扇とは、講談師が釈台を叩くときに使うアレだ。落語には、張扇がない。その分、講談は物語の山場で盛り上げられる。客を引きこめるのだ。今日も、伯山先生の勢いの良い語り口とホールに響き渡る釈台を叩く音に観客は引きこまれ、気付けばお仲入り。

落語とはまた違った良さがあり、同じ根多でここまで変わるものかと思わされた。他の落語もある講談の根多を聴いてみようかと、一人思った。
 さて、仲入り前でもう満足なのだが、ここで問題が一つ。伯山が熱演しすぎて、時間がない。仲入り後は今日のメインと言っていい、義士伝だというのに。大丈夫なのだろうか。時間ギリギリで席に着く。そして、黒紋付に着替えた伯山登場。時間は延ばしてもらえたらしく、少しマクラを振ってから根多に入る。「赤穂義士銘々伝 南部坂雪の別れ」。一言で言うと、別れの噺だ(まとめすぎ)。というか、この赤穂義士伝全体が別れの噺なのだ。討ち入りに征く四十七士とその家族、友人、大事な人との別れを描いているのだ。義士達の人数だけ、別れがある。その一つ一つを描いたのが、赤穂義士伝なのだ。それを初めて聞いた時、初めて腑に落ちた気がした。自分はあまり忠義というものが好きではない。だから、赤穂義士伝というものもそこまで好きではなかった。だがそれを聞いて、そして伯山先生の「南部坂雪の別れ」を聴いて、そういった感情は消え去った。暗くなったホールにスポットライトで浮かび上がった伯山先生は、仲入り前とは打って変わった落ち着きようで、ホールの客を引きこんでいく。伯山先生は、この別れのストーリーを繊細に、そしてダイナミックに語っていく。涙が出そうになった。気がついたら場内は明るくなり、大拍手に包まれていた。ようやく、赤穂義士伝を好きになれた気がした。

 こうして会は終わった。ただただ、凄かった。だが、一つ心配な所もある。今でああ上手かったら、年を取ったらあの芸はどうなってしまうのだろうか。伯山が早熟でないことをただただ願うばかりだ。そして、もう一つ思っていることがある。伯山先生には、芸人でも、芸能人でもなく、講談師として生きていってほしい。講談師・神田伯山先生の今後のますますのご成長とご活躍をお祈りいたしまして、この特派員レポート、大団円でございます...。

(公演写真:藤本史昭)

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