今回の友の会「こがねいメンバーズ」会員限定イベントは、開館10周年記念の『ピアノ・フェスティバル』の特別企画として、小川加恵さんによるフォルテピアノのレクチャーコンサートを開催しました。

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まずはレクチャーから。
ピアノの歴史は、今からおよそ300年前のイタリア、1700年頃にクリストフォリによって作られた「クラヴィチェンバロ・コル・ピアノ・エ・フォルテ(弱音も出せるチェンバロ)」から始まると言われています。
18世紀後半になると、ピアノ製作の中心はウィーンに移り、モーツァルトやベートーヴェンもこのようなフォルテピアノを使って作曲したということで、小川さんの愛器、1835年製のフォルテピアノ「アントン・シュヴァルトリンク」で、モーツァルトやベートーヴェンの小品を数曲披露。モダンピアノよりも軽快なその響きは、スケールや細かいパッセージがコロコロと軽やかで、サロンコンサートのような優雅な雰囲気に包まれました。

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フォルテピアノは音の減衰が早いということを示す実験も。
ベートーヴェンの「月光ソナタ」は、もともとは「ペダルは最後まで踏みっぱなし」の指示が楽譜に記されていたといいます。モダンピアノではペダルは踏みかえながら弾くのが当たり前なこの曲を、当時の楽器で、当時の指示通りペダルを踏みっぱなしで弾いた演奏は、非常に貴重な音体験となりました。

続くレクチャーは、お持ち込みいただいた「アントン・シュヴァルトリンク」について。
1835年、プラハ(旧オーストリア帝国)生まれのこの楽器は、ボディは木目のきれいなウォールナット、白鍵には真珠層を持つ貝が貼られ、黒鍵は金箔の上にべっ甲がかぶせられており、職人のこだわりが随所に感じられる工芸品のような美しさ。
シューベルトの「即興曲 第3番」の演奏を楽しんだあとの休憩時や終演時には、お客様も興味津々でその美しさに見とれていました。

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後半は、まさにこの楽器が生まれた頃に作曲された名曲、ショパンの「ノクターン」「幻想即興曲」から。フォルテピアノは音域ごとに異なる音色を持つのも特徴のひとつ。低音域は優雅でかすかにうなるような音色、中音域は丸く柔らかな印象、高音域ではきらめくような音色という説明を受けてから、それぞれの音域の音色を噛みしめるように楽しみました。

クララ・シューマンの「ノットゥルノ」の演奏に続いては、質疑応答を。
モダンピアノとの弾き心地の違いについての質問や、音量についての質問などが飛び交い、小川さんはこの楽器との出会いや魅了されたポイント、ご自身の小柄な体格との相性など、演奏者ならではの熱い想いを語ってくださり、最後はロベルト・シューマンの「謝肉祭」からの演奏で終演となりました。

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外は雪。凍えるような寒さの日でしたが、温もりのある音色で束の間のタイムスリップを堪能したひとときとなりました。
来年度の友の会イベントもどうぞお楽しみに。

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〒184-0004
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TEL: 042-380-8077
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開館時間: 9:00 ~ 22:00
受付時間: 9:00 ~ 19:00
休館日: 毎月第2火曜日および第3火曜日(祝日の場合はその直後の平日) / 年末年始 / 保守点検日
友の会イベントレポート
ショパンが生きていた時代の楽器で聴く 名曲レクチャーコンサート
23. 02. 21

今回の友の会「こがねいメンバーズ」会員限定イベントは、開館10周年記念の『ピアノ・フェスティバル』の特別企画として、小川加恵さんによるフォルテピアノのレクチャーコンサートを開催しました。

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まずはレクチャーから。
ピアノの歴史は、今からおよそ300年前のイタリア、1700年頃にクリストフォリによって作られた「クラヴィチェンバロ・コル・ピアノ・エ・フォルテ(弱音も出せるチェンバロ)」から始まると言われています。
18世紀後半になると、ピアノ製作の中心はウィーンに移り、モーツァルトやベートーヴェンもこのようなフォルテピアノを使って作曲したということで、小川さんの愛器、1835年製のフォルテピアノ「アントン・シュヴァルトリンク」で、モーツァルトやベートーヴェンの小品を数曲披露。モダンピアノよりも軽快なその響きは、スケールや細かいパッセージがコロコロと軽やかで、サロンコンサートのような優雅な雰囲気に包まれました。

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フォルテピアノは音の減衰が早いということを示す実験も。
ベートーヴェンの「月光ソナタ」は、もともとは「ペダルは最後まで踏みっぱなし」の指示が楽譜に記されていたといいます。モダンピアノではペダルは踏みかえながら弾くのが当たり前なこの曲を、当時の楽器で、当時の指示通りペダルを踏みっぱなしで弾いた演奏は、非常に貴重な音体験となりました。

続くレクチャーは、お持ち込みいただいた「アントン・シュヴァルトリンク」について。
1835年、プラハ(旧オーストリア帝国)生まれのこの楽器は、ボディは木目のきれいなウォールナット、白鍵には真珠層を持つ貝が貼られ、黒鍵は金箔の上にべっ甲がかぶせられており、職人のこだわりが随所に感じられる工芸品のような美しさ。
シューベルトの「即興曲 第3番」の演奏を楽しんだあとの休憩時や終演時には、お客様も興味津々でその美しさに見とれていました。

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後半は、まさにこの楽器が生まれた頃に作曲された名曲、ショパンの「ノクターン」「幻想即興曲」から。フォルテピアノは音域ごとに異なる音色を持つのも特徴のひとつ。低音域は優雅でかすかにうなるような音色、中音域は丸く柔らかな印象、高音域ではきらめくような音色という説明を受けてから、それぞれの音域の音色を噛みしめるように楽しみました。

クララ・シューマンの「ノットゥルノ」の演奏に続いては、質疑応答を。
モダンピアノとの弾き心地の違いについての質問や、音量についての質問などが飛び交い、小川さんはこの楽器との出会いや魅了されたポイント、ご自身の小柄な体格との相性など、演奏者ならではの熱い想いを語ってくださり、最後はロベルト・シューマンの「謝肉祭」からの演奏で終演となりました。

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外は雪。凍えるような寒さの日でしたが、温もりのある音色で束の間のタイムスリップを堪能したひとときとなりました。
来年度の友の会イベントもどうぞお楽しみに。