11月22日(日)、ゲルハルト・オピッツによるピアノ・リサイタルを開催しました。

未曽有の事態となった2020年は、ベートーヴェン生誕250周年のアニバーサリーイヤー。

コロナ禍により多くの演奏会が中止を余儀なくされ、アーティストの皆さんも様々な葛藤を抱えながら過ごされている中、ベートーヴェンの魂を受け継ぐとも言われているドイツの巨匠、ゲルハルト・オピッツが来日を果たし、ベートーヴェンのピアノ・ソナタ4曲という贅沢この上ないプログラムを披露してくださいました。

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冒頭は、「悲愴」。ベートーヴェン自身がつけたタイトルではないそうですが、昨今の世相を思い起こさせるような重々しい序奏や突如走り出す焦燥感のあるアレグロが特徴の第一楽章、耳にする機会も多い甘美でメロディックな第二楽章、歌心にあふれた第三楽章と、オピッツ氏が紡ぐ淡々とした表現ながらも深い情感をたたえた音に胸を打たれます。

続いて、「ルツェルン湖の月光の波に揺らぐ小舟のよう」と、ドイツの詩人に評された「月光」。ベートーヴェンの音楽を読み解き、「ベートーヴェンの音楽は、他者への思いやりにあふれる彼の人柄を映し出しています」とご本人が語ったように、異なる曲想の3つの楽章を豊かな音色で彩り、聴衆を虜にしました。

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後半に入ってもなお、聴衆の心を掴んで離しません。

ベートーヴェン自身が苦悩に立ち向かいながら作曲を続けた「テンペスト」はどこか哲学的であり、それとは対照的にまるで物語のページをめくるかのように流れる音楽に身を委ねます。続く「熱情」では、「第1、3楽章に込められた溢れんばかりの情熱と、第2楽章が提示する平穏や思慮深さとの対比が見事」、とご本人が語られたように、魂がほとばしる熱演を披露してくださいました。ベートーヴェンが生涯を賭して作曲を続けたピアノ・ソナタ。その情熱を受け取った客席の皆さんからは、あたたかな拍手と喝采が贈られました。

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鳴りやまない拍手に応え、アンコールでは、同じくドイツの作曲家、ブラームスの「6つの小品Op.118」より第2番 間奏曲イ長調の演奏を。コンサートの終了を惜しむようなメランコリックな美しいハーモニーが響きました。

「ベートーヴェンは、人類の美徳と共感力に訴えかけ、人々に救済と希望を与えます。」

と、事前インタビューで語ってくれたオピッツ氏。コロナ禍により生のコンサートに足を運ぶ機会も少なくなってきている今だからこそ、ベートーヴェンの音楽によるメッセージが、オピッツ氏による演奏で心の奥底まで響いてくるような珠玉のコンサートでした。

公演写真:藤本史昭

【プログラム】

ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ
 第8番 「悲愴」
 第14番 「月光」
 第17番 「テンペスト」
 第23番 「熱情」

<アンコール>

ブラームス:「6つの小品Op.118」より 第2番 間奏曲 イ長調

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開館時間: 9:00 ~ 22:00
受付時間: 9:00 ~ 19:00
休館日: 毎月第2火曜日および第3火曜日(祝日の場合はその直後の平日) / 年末年始 / 保守点検日
イベントレポート
【THE SUPER PREMIUM】ゲルハルト・オピッツ ピアノ・リサイタル
20. 12. 04

11月22日(日)、ゲルハルト・オピッツによるピアノ・リサイタルを開催しました。

未曽有の事態となった2020年は、ベートーヴェン生誕250周年のアニバーサリーイヤー。

コロナ禍により多くの演奏会が中止を余儀なくされ、アーティストの皆さんも様々な葛藤を抱えながら過ごされている中、ベートーヴェンの魂を受け継ぐとも言われているドイツの巨匠、ゲルハルト・オピッツが来日を果たし、ベートーヴェンのピアノ・ソナタ4曲という贅沢この上ないプログラムを披露してくださいました。

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冒頭は、「悲愴」。ベートーヴェン自身がつけたタイトルではないそうですが、昨今の世相を思い起こさせるような重々しい序奏や突如走り出す焦燥感のあるアレグロが特徴の第一楽章、耳にする機会も多い甘美でメロディックな第二楽章、歌心にあふれた第三楽章と、オピッツ氏が紡ぐ淡々とした表現ながらも深い情感をたたえた音に胸を打たれます。

続いて、「ルツェルン湖の月光の波に揺らぐ小舟のよう」と、ドイツの詩人に評された「月光」。ベートーヴェンの音楽を読み解き、「ベートーヴェンの音楽は、他者への思いやりにあふれる彼の人柄を映し出しています」とご本人が語ったように、異なる曲想の3つの楽章を豊かな音色で彩り、聴衆を虜にしました。

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後半に入ってもなお、聴衆の心を掴んで離しません。

ベートーヴェン自身が苦悩に立ち向かいながら作曲を続けた「テンペスト」はどこか哲学的であり、それとは対照的にまるで物語のページをめくるかのように流れる音楽に身を委ねます。続く「熱情」では、「第1、3楽章に込められた溢れんばかりの情熱と、第2楽章が提示する平穏や思慮深さとの対比が見事」、とご本人が語られたように、魂がほとばしる熱演を披露してくださいました。ベートーヴェンが生涯を賭して作曲を続けたピアノ・ソナタ。その情熱を受け取った客席の皆さんからは、あたたかな拍手と喝采が贈られました。

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鳴りやまない拍手に応え、アンコールでは、同じくドイツの作曲家、ブラームスの「6つの小品Op.118」より第2番 間奏曲イ長調の演奏を。コンサートの終了を惜しむようなメランコリックな美しいハーモニーが響きました。

「ベートーヴェンは、人類の美徳と共感力に訴えかけ、人々に救済と希望を与えます。」

と、事前インタビューで語ってくれたオピッツ氏。コロナ禍により生のコンサートに足を運ぶ機会も少なくなってきている今だからこそ、ベートーヴェンの音楽によるメッセージが、オピッツ氏による演奏で心の奥底まで響いてくるような珠玉のコンサートでした。

公演写真:藤本史昭

【プログラム】

ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ
 第8番 「悲愴」
 第14番 「月光」
 第17番 「テンペスト」
 第23番 「熱情」

<アンコール>

ブラームス:「6つの小品Op.118」より 第2番 間奏曲 イ長調