今回の友の会会員向けイベントは、小金井ゆかりの俳優で朗読家の長谷川葉月さんと、季節の室礼(しつらい)を研究されている枝川寿子さんを迎え、桜にまつわる作品の朗読と講話をお届けしました。

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まずは梶井基次郎 作『桜の樹の下には』の朗読から。
暗い舞台にスポットライトがあたると「桜の樹の下には屍体が埋まっている!」という強烈なセリフで幕が開きました。
病床に臥せっていて「生」と「死」について逡巡していた梶井が表した「桜」。その妬ましいほどの神々しい美しさや、それと表裏一体であるおどろおどろしさが、長谷川さんの抑揚をおさえた朗読や時折落とす視線などによって表現されました。

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続く、枝川さんによる講話では、そんな「桜」の語源や、なぜ日本人は花見をするのか、などについて、興味深い話を聞くことができました。
サクラは「サ」の音=農耕・稲の意、と、「クラ」の音=神聖な高い所の意、が合わさった言葉で、「春の農作の開始時期に咲く、農耕民族である日本人にとって重要な花。満開の桜を秋の豊作に見立て先に喜びお祝いをしたり、田の神に豊作を祈ったり、という意味で花見をします」とのこと。今年の桜を見るときには、より深く味わえそうな気がするレクチャーでした。

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後半は、冒頭の作品とはうって変わって明るい作品、角田光代 作『名前』の朗読をお届けしました。

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「春に生まれたから」という簡単な理由で平凡な「春子」という名前を付けられたと思っていた彼女が、陣痛が来て乗り込んだタクシーの中から満開の桜を見て「春だ、と今さら気づいたかのように思った。~視界のすみずみまで春だった。~そうか、母が私を産むために急いだ道も、こんなふうにまるごと春だったんだろう」と名前に込められた愛情に気づき、そして、これから名前をつけるお腹の中の子のことを想うというストーリー。
子ども時代のコミカルなシーンから、最後の畳みかけるような鮮やかな春の描写と感情の高揚までをありありと演じ、客席はあたたかい感動に包まれました。

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最後は二人の対談で、名前につく「子」の由来や、お花見以外の年中行事や節供(節句)、それに伴う室礼についてなど、話が弾みました。

寒波が到来していた中でしたが、桜をテーマにした朗読と講話を通して、よりいっそう春が待ち遠しくなったひとときとなりました。

ご来場いただいたみなさま、レポートをご覧いただいたみなさま、ありがとうございました。

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友の会イベントレポート
朗読と年中行事の愉しみ~桜の季節に寄せて~
25. 03. 08

今回の友の会会員向けイベントは、小金井ゆかりの俳優で朗読家の長谷川葉月さんと、季節の室礼(しつらい)を研究されている枝川寿子さんを迎え、桜にまつわる作品の朗読と講話をお届けしました。

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まずは梶井基次郎 作『桜の樹の下には』の朗読から。
暗い舞台にスポットライトがあたると「桜の樹の下には屍体が埋まっている!」という強烈なセリフで幕が開きました。
病床に臥せっていて「生」と「死」について逡巡していた梶井が表した「桜」。その妬ましいほどの神々しい美しさや、それと表裏一体であるおどろおどろしさが、長谷川さんの抑揚をおさえた朗読や時折落とす視線などによって表現されました。

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続く、枝川さんによる講話では、そんな「桜」の語源や、なぜ日本人は花見をするのか、などについて、興味深い話を聞くことができました。
サクラは「サ」の音=農耕・稲の意、と、「クラ」の音=神聖な高い所の意、が合わさった言葉で、「春の農作の開始時期に咲く、農耕民族である日本人にとって重要な花。満開の桜を秋の豊作に見立て先に喜びお祝いをしたり、田の神に豊作を祈ったり、という意味で花見をします」とのこと。今年の桜を見るときには、より深く味わえそうな気がするレクチャーでした。

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後半は、冒頭の作品とはうって変わって明るい作品、角田光代 作『名前』の朗読をお届けしました。

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「春に生まれたから」という簡単な理由で平凡な「春子」という名前を付けられたと思っていた彼女が、陣痛が来て乗り込んだタクシーの中から満開の桜を見て「春だ、と今さら気づいたかのように思った。~視界のすみずみまで春だった。~そうか、母が私を産むために急いだ道も、こんなふうにまるごと春だったんだろう」と名前に込められた愛情に気づき、そして、これから名前をつけるお腹の中の子のことを想うというストーリー。
子ども時代のコミカルなシーンから、最後の畳みかけるような鮮やかな春の描写と感情の高揚までをありありと演じ、客席はあたたかい感動に包まれました。

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最後は二人の対談で、名前につく「子」の由来や、お花見以外の年中行事や節供(節句)、それに伴う室礼についてなど、話が弾みました。

寒波が到来していた中でしたが、桜をテーマにした朗読と講話を通して、よりいっそう春が待ち遠しくなったひとときとなりました。

ご来場いただいたみなさま、レポートをご覧いただいたみなさま、ありがとうございました。