小金井 宮地楽器ホール

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【イベントレビュー】滝 千春「12-toneS」

小春日和の穏やかな午後。
ホールの中では、刺激的なプログラムのクラシックコンサートが開催されました。

出演は、たしかな技量と意欲的なプログラムで定評のある小金井ゆかりのヴァイオリニスト・滝 千春さんと、同世代の12人の俊英たち。

前半は、江沢茂敏さんのピアノを伴って滝さんのヴァイオリン・ソロを。
存命だったら89歳という「今」の作曲家シュニトケの作品の数々を、朗読のような滝さんの解説を挟みながらお届けしました。

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ロシア風の憂いが漂いながらもリズミカルな「ポルカ」、モーツァルトのような軽快でのびやかな「祝賀ロンド」に続いて、哀愁を強調する泣きのビブラートが映える「タンゴ」。
シュニトケの作風の多彩さもさることながら、なじみのない曲でも説得力を持って聴かせる滝さんの解釈の深さと表現の幅に、最初の3曲だけで惹きつけられました。

次は、12月にピッタリの「きよしこの夜」。
しかし、ここはロシア内のドイツ自治区に生まれ、自身のアイデンティティの悩みや、戦時中の迫害など複雑な人生を送ったシュニトケ。静かで美しいクリスマス・キャロルが、途中から調子っぱずれに。不協和音が突如ぶつかる様は不気味でもあり、ブラックサンタがにやりと笑っているような”楽しい不条理性“も感じられました。

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前半の最後はシュニトケの「ヴァイオリン・ソナタ 第1番」。
ストラヴィンスキーのような鋭いリズムや、耳をつんざくような鮮烈な和音など、刺激的でありながら、音楽としての気品や美しさもまとっているような現代曲でしたが、滝さんと江沢さんの緊密に練り込まれたアンサンブルによって、ごく自然に、私たちを異世界へ誘ってくれたような感覚でした。

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そして後半は、なんと休憩中から演奏がスタート。
ペルトの「鏡の中の鏡」をピアノとヴァイオリンが、1音1音を余韻まで慈しむように演奏すると、静かに美しくループする音楽の中で、徐々に客席の明かりが落ち、ステージの照明が増していきます。光の演出も相まって、観客はその響きの中に身をゆだね、瞑想するように集中していったところで、ペルトの「フラトレス」へ。

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「フラトレス」とは、ラテン語で「兄弟、同志」の意味とのことで、曲冒頭で超絶技巧を披露した滝さんを囲むように、同世代の気鋭の奏者たちが並び、まさに”仲間“という息のあったアンサンブルを聞かせます。

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そして最後は、お待ちかねのバルトーク「ディヴェルティメント」。
バルトークらしい力強く厚みのある中低音とリズムに、民族的なメロディーが重なります。シンコペーションがお洒落な第1楽章、闇に堕ちていくような第2楽章、細かなパッセージが疾走感のある第3楽章と、いずれも一糸乱れぬ重奏や、たたみみかけ合う協奏がとにかく「かっこイイ!!」 ピアニッシモからフォルティッシモまでの音量の幅も大きく、弦楽器11人のみの演奏とは思えない迫力と充実感に圧倒されました。大ホールの箱自体もよく鳴っていて、濃密な演奏を喜んでいるようでした。

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アンコールには、全員でピアソラの「フーガと神秘」を。大喝采のうちに終演となり、「知らない曲も多かったけど、とても良かった」「素晴らしい演奏だった」との声が多数寄せられました。

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ご来場いただきましたみなさま、このレポートを読んでいただきましたみなさま、ありがとうございました。

■公演の様子は、小中学生の「こがねいジュニア特派員」もレポートしてくれています。こちらもぜひご覧ください。
【こがねいジュニア特派員 イベントレポート vol.23】
【こがねいジュニア特派員 イベントレポート vol.24】

(公演写真:藤本史昭)

本日のアンコール曲目

ピアソラ:フーガと神秘

ご来場ありがとうございました。

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