【イベントレビュー】奥村 愛 デビュー20周年コンサート ～ヴァイオリンの旅路～
小金井が誇るヴァイオリニスト、奥村 愛さんのデビュー20周年を記念するコンサートを開催いたしました。
奥村さんの大切な相棒であるヴァイオリン、「カミロ・カミリ」が旅した軌跡を綴るリーディング・コンサート。
第一部は甲斐田裕子さん、もといオールド・ヴァイオリン「カミロ・カミリ」の語りから始まりました。
ヴァイオリンの寿命は600年と言われているそうで、1738年製のカミリは今、284歳。まさに今が青春時代！ではありますが、そのカミリが十代の頃に物語はさかのぼります。1人で何役もを演じ分ける甲斐田さんのなめらかな美しい語りに客席はそのストーリーに引き込まれていきます。
そしていよいよ1曲目。カミリが最初に出会った作曲家、ヴィヴァルディの「ヴァイオリン・ソナタ」を弾く奥村さんは、音楽に身をゆだねるようにのびやかで、堂々としたたたずまい。このコンサートのためにギターの岡本拓也さんが譜面を起こしたという、珠玉のデュオの音色がホールを優しく包みます。
続いての出会いは、かの大作曲家、モーツァルト。彼が残した数少ない短調の「ヴァイオリン・ソナタ」は河野紘子さんのピアノとのデュオでお届け。優しくも物哀しい響きをたたえた旋律に感情が揺さぶられるようでした。
そして、舞台はイタリアのジェノヴァへ。「悪魔に魂を売った」とまで言われた超絶技巧を駆使するパガニーニが、恋人であったギタリストと一緒に弾きたいがために作曲した「チェントーネ・ディ・ソナタ」を披露。その優雅で繊細なメロディーは、パガニーニの意外な一面を垣間見せてくれるようでした。
第一部の最後は、「19世紀の三大ヴァイオリニスト」と呼ばれる作曲家、ヴィエニアフスキーの「創作主題による華麗なる変奏曲」。大曲を流麗に弾きこなす奥村さんの姿に、最高の盛り上がりを見せました。
第二部の始まりは、音楽の都、ウィーン。再び音楽文化が花開く一方、世界大戦など大変な時代を生き抜いたカミリは、クライスラーの曲を奏でていたようです。老若男女の音声を操る甲斐田さん語りがストーリーを彩ります。
「シンコペーション」「ウィーン小行進曲」は暗い時代背景を吹き飛ばすような明るく力強い曲調で、演奏することの楽しさがダイレクトに伝わってきました。
そして遂に、誕生から254年に渡り各地を巡ってきたカミロ・カミリが、奥村さんの手に辿り着きます。
ここからはジプシー、タンゴ、ラグタイムと、クラシックだけに留まらない様々なジャンルの挑戦を続けている奥村さんの音楽とトークで観客を魅了していきます。
ジプシーメドレー（山中惇史 編）では、モンティ「チャールダーシュ」、ディニーク「ひばり」、サラサーテ「ツィゴイネルワイゼン」と息つく間もなく駆け抜けるような演奏の中、ウグイスの鳴き声といった遊び心も。
ゲーゼの「ジェラシー」ではコンチネンタル・タンゴの曲を色気たっぷりに、ジョプリン「ラグタイム・ダンス」では足でリズムをとりながら演奏する一節（譜面に書いてあるそうです！）など、茶目っ気あふれる演奏が続きます。
そして、世界を巡る旅を締めくくるのは、アヴレウ作曲「ティコティコ・ノ・フバ」。
南米音楽らしい軽快でユーモラスな雰囲気をヴァイオリン、ピアノ、ギターのアンサンブルで堪能しました。
アンコールは作曲家・加藤昌則さんが奥村さんのために書き下ろしたという
「ブリージング・エアー」。
颯爽とした気持ちの良いヴァイオリンとピアノの響きで終演。
デビュー20周年という節目をみんなで祝う、ハートフルな公演となりました。
お客さまからは、「曲の背景を理解しながら聴いていくのは斬新で興味深かったです」「クラシックからタンゴまで素晴らしかったです」「幸せなひと時を過ごさせていただきました」などのお声をいただきました。
ご来場いただきましたみなさま、レビューを読んでくださったみなさま、ありがとうございました。
最後に、こきんちゃんと一緒に笑顔のみなさんも！
なお、公演の様子は、3人の「こがねいジュニア特派員」がレポートしてくれています。
こちらもぜひご覧ください。
【こがねいジュニア特派員 イベントレポート vol.13】
【こがねいジュニア特派員 イベントレポート vol.14】
【こがねいジュニア特派員 イベントレポート vol.15】
（公演写真：藤本史昭）
本日のアンコール曲目
奥村 愛 デビュー20周年コンサート～ヴァイオリンの旅路～
【本日のアンコール】
加藤昌則：ブリージング・エアー
ご来場ありがとうございました！
