台風が迫る雲の低い秋分の日。日本で唯一のプロ・バラライカ奏者、北川 翔によるコンサートを開催しました。
第1部はバラライカとアコーディオンのデュオ。
ロシアジプシー「黒い瞳」で開演すると、最初の一音から柔らかく哀愁のある音色が響き、ホールは無音より静かな静寂に包まれました。大田智美によるアコーディオンが加わると、バラライカの情熱的なトレモロも熱を帯び、深い愛が歌われました。
楽器の構造や、奏法についてのトークなども交えながら、異国情緒たっぷりにロシア民謡を数曲演奏した後は、クラシックのアレンジを。「アヴェ・マリア」(カッチーニ)ではアコーディオンが壮麗なオルガンのように奏でられ、続くバレエ音楽「死の舞踏」(サン=サーンス)ではオーケストラにも負けないダイナミックでドラマティックなワルツの熱演となりました。
第2部はロシア民族楽器アンサンブルも加わっての演奏。
コントラバス・バラライカが登場するやいなや、その大きさに会場からはザワザワと驚きの声が。
ロシア民謡「月は輝く」では、プリマ・バラライカの美しい高音に、ひと回り大きいアルト・バラライカが厚みを加え、ロシアの琴グースリによる華やかなグリッサンドや、コントラバス・バラライカによるベース、時に旋律を時に伴奏を奏でるオールラウンダーのアコーディオン、実に様々な音色とそのアンサンブルを堪能しました。
聴きなじみのある映画音楽や「上を向いて歩こう」のアレンジを、ロシア民族楽器アンサンブルならではの素朴で哀愁のある響きで楽しんだあとは、北川さん自らが作曲した「日陰のまち」を。ゆったりとした3拍子に乗せて情感たっぷりに演奏されたその曲は、物哀しく、しかしどこかあたたかな風が吹いているような雰囲気で、会場全体がその世界観に惹き込まれていくようでした。
最後は、バラライカといえばこの曲「カリンカ」です。各楽器の超絶技巧もさることながら、その土地に住む人々の生活の中から生まれた民族楽器ならではの、心のうねりが、音楽の起源により近い形で表現される魅力を存分に感じさせる演奏で、会場は大いに沸きました。
お客さまからは、「バラライカを初めて聴いたが虜になった」「トークもわかりやすく素晴らしい演奏だった」「こんな情勢の時だからこそ、今回の公演は価値があると思う」などのお声をいただきました。
ご来場いただきましたみなさま、レビューを読んでくださったみなさま、ありがとうございました。
なお、公演の様子は、2人の「こがねいジュニア特派員」がレポートしてくれています。
こちらもぜひご覧ください。
【こがねいジュニア特派員 イベントレポート vol.11】
【こがねいジュニア特派員 イベントレポート vol.12】
公演写真:友澤綾乃
北川翔 バラライカ・コンサート~哀愁のバラライカ~
【本日のアンコール】
アイルランド民謡:ダニー・ボーイ
モンティ:チャルダッシュ
ご来場ありがとうございました!