晴れやかな晩秋の午後、ラインホルト・フリードリッヒ率いる、ヨーロッパのスーパープレイヤーたちによる金管五重奏のコンサートを開催しました。
地域のお客様を始め、国内のトッププレイヤーや楽器ケースを持った学生さんなども多く来場され、注目度の高さがうかがえました。
5人がオールブラックのシックかつカジュアルな出で立ちで登場すると、一気に約450年の時をさかのぼり、バッハよりも古いルネッサンス期のダウランドからスタート。
リュートのために書かれた「ダウランド組曲」を天才トロンボーン奏者でもあるリンドバーグが編曲したもので、金管五重奏ならではのハーモニーがバチッとはまる心地よい重厚さがありながらも、宮廷舞曲らしい優雅さ、軽やかさがありました。
[ユナイテッド・ユーロ ブラス・クインテット]
続くエヴァルドの「金管五重奏曲」は、金管五重奏というジャンルの黎明期に書かれた作品の一つです。金管楽器のための曲といえば、儀式や祭典のためのファンファーレや行進曲のような小品が主だった頃に、自ら作曲した弦楽四重奏を原曲とした室内楽的な楽曲を書いたそうです。
7月に開催した友の会会員向けイベント「知って楽しむ!華麗なる金管五重奏の世界」では、第1番をお届けしましたが、今回は演奏機会が少ないという第4番をお届け。
世界最高峰の奏者たちによる輝かしい音色で、お洒落で複雑な和音やオブリガードなどを交えた聴きごたえのあるオリジナル曲を満喫しました。
[ラインホルト・フリードリッヒ、イェルーン・ベルワルツ(トランペット)]
前半を締めくくるバッハ「ブランデンブルク協奏曲 第3番」と、後半1曲目のヴィヴァルディ「ラ・フォリア 第12番」は、弦楽器やチェンバロのために書かれたバロック期の音楽。
もちろん息継ぎが考慮されているわけでもなく、細かいパッセージや分散和音、超高音も含まれる曲を、まるで弦楽器や鍵盤を弾いているかのようにいとも簡単に吹いていて、特にホルンとトロンボーンの超絶技巧の掛け合いには驚嘆するばかりでした。
[ラッセ・マウリッツェン(ホルン)]
続いてはデフレ―セの「ジェームズ・アンソール組曲」。
タイトルにある「ジェームズ・アンソール」とは、個性的で刺激的な画風のベルギーの画家の名前。その絵画を音楽で表した曲というだけに、鋭い音色、皮肉めいた不協和音のコラール、半音階を多用したいたずらっぽいメロディーなど、現代曲の楽しさが詰まっていました。
[トーマス・ロイスランド(テューバ)]
次のヴァイル「ユーカリ」は、テューバがハバネラのリズムを刻む中で、トロンボーンソロが哀愁と色気のある表現でのびやかに歌い上げ、ミュートをつけたトランペットがやまびこのように呼応し、余韻を演出していました。
[イアン・バウスフィールド(トロンボーン)]
最後は聴きなじみのあるスウィング・ジャズの名曲を集めた「グレン・ミラー・メドレー」と、鳴りやまない大喝采に応えたアンコールとして「ビートルズ・メドレー」を。
密度の濃い響きと、軽快なリズムで観客を圧倒し、大盛り上がりのうちに終演となりました。
たった5本の金管楽器で、ルネッサンス期の宮廷舞曲から現代のポップミュージックまで、時やジャンルを軽々と超え、それぞれの曲の持ち味を華麗に魅せてくれた巨匠たち。
耳に、心に、栄養が行きわたるような、贅沢で充実したひとときでした。
ご来場いただきましたみなさま、このレポートを読んでいただきましたみなさま、ありがとうございました。
■公演の様子は、小学生の「こがねいジュニア特派員」もレポートしてくれています。こちらもぜひご覧ください。
【こがねいジュニア特派員 イベントレポート vol.15】
【こがねいジュニア特派員 イベントレポート vol.16】
(公演写真:藤本史昭)
J.レノン&P.マッカートニー:
ビートルズ・メドレー
(ペニー・レイン/レット・イット・ビー/イエスタデイ/オブ・ラ・ディ、オブ・ラ・ダ)
J. ダウランド(C. リンドバーグ編):
『ダウランド組曲』より「デンマーク王のガイヤルド」
ご来場ありがとうございました。