小金井 宮地楽器ホール

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シギスヴァルト・クイケンに今回の日本ツアーについて伺いました!!

シギスヴァルト・クイケン(ラ・プティット・バンド音楽監督)

【Q1.】今回の来日について、抱負・意気込みをお聞かせください。また今回のメンバーについて、特筆すべきことがあればコメントしてください。

【A1.】今回の日本ツアーでは、バッハの管弦楽組曲とブランデンブルク協奏曲第5番の演奏を通して、クラシック音楽(バロック音楽はその内のごく一部ですが)とは、今日でもこれまでと同じように生きているものであり、大きな喜びで、また多くの人々にとって非常にストレスの多い困難なこの時代に多くの意味で癒しの力のようなものを提供することができるものだということを、もう一度心の底より表現したいと思います。この音楽に対して心を開けば、音楽の深い性質によって、少しの間我々の魂が原点に戻ることができ、それによって深遠な生命感と勇気を得られます。

私は量よりも質を大切にしています(勿論、常に両方とも相互に関係していますが!)。バッハの音楽を演奏することは私にとって非常に優先すべきことであります。その理由は、我々の日常の経験よりもっと永遠に近いと思われる深い天才から生まれたものであるからで、それだけの利益をもたらすと信じています。

バッハに対する私の尊敬と愛によって、彼の音楽の真髄により近づくために常に更なる挑戦に挑むのです。こうしたことに客観的な基準は無い上、すべての音楽家達はそれを試みるための独自の方法があることをよく認識しています。バッハの芸術に取り組む際にまず大事なことは言葉の大きな意味の精神世界に一般的にオープンになることであると信じています。

更に技術的な面で、私個人的な意見では、バッハが作曲した当時、彼の想像の中で「生きて」精通していた楽器や演奏技法を使うことが最も有効であると思います。そうすることで、彼の作品にはずみがつく機会がより増えることは全く疑いありません。しかし、これらの楽器は技術と、味、信念を持って取り扱う必要があることは確かです!そして、こうした楽器や演奏技法を使うことが必ずしも説得力のある美しい演奏を保証するものでもありません!その楽器を背後で操る演奏家の呼吸力とアクションの中心にいることがより必要になってくるのです!

ラ・プティット・バンドが存在してきた全期間(1972年以来!)、私は才能と、知識、味、そして経験など力を組み合わせることに協力的な演奏家達を一つにまとめることに力を注いできました。そして、生命が変化していくのと同じように、オーケストラもまた常に変化してきました。それはまるで一人の人生がさまざまな段階を経て成熟していくかのように。と同時にいつも私は若い演奏家達に我々の活動に参加してもらうよう気を配ってきました。そうすることによって新鮮で挑戦的なエネルギーを保つことができます。一例として、今回LPBの一員としてツアーに参加するトランペット奏者達を挙げたいと思います。バッハが習慣的に使っていたオリジナルな演奏技術を使う彼らは、今日最強の「本物」の核の代表であります。彼らが使う楽器には後世に追加された穴は全く無く、楽器本来の自然な倍音のみを鳴らすものです。穴が追加されたことによって技術的には容易になったものの、バロック・トランペットの本質を変えるものとなってしまったのです!

メンバーのヴァイオリン奏者は全員18世紀初頭の技術を使用します。楽器を左肩に対して、あるいは上に軽く配置しますが、あごと肩の間に固定したり挟んだりしないのです!よってあご当てや肩当てを使用することがありません。弦楽器の低音パートは、8フィートのヴィオローネ(“basse de violon”)とヴィオロンチェロ(スコアに使用を求める明示がある場合のみ!)で構成されています。このヴィオロンチェロはバッハの環境では「ダ・スパッラ」(すなわち肩かけチェロ!)であったと考えます。当時のバッハの楽器構成に敬意を払うことで、典型的な合奏の音を生み出すことができ、また明らかにこれが実に自然に彼の音楽と調和するのです。

【Q2.】今回の演奏曲目管弦楽組曲全曲と、ブランデンブルク協奏曲第5番について、とくに聴衆に聴いてほしいポイントはなんですか。

【A2.】バッハの管弦楽組曲では、当時のフランス式、国際的ヨーロピアン・スタイルの最も美しい例を見ることができます。バッハは(彼のドイツ人同僚と同様に、)メヌエット、ガヴォット、ブレー、サラバンドなど舞踊曲作曲において、フランスの慣用的なスタイルを非常によく心得ていました。ところがそれを、絶えず存在する彼のパーソナルなタッチと言語を使って、従来のすべての形態に色付けすることによって、突破し上回ったものを作り上げたのです。伝統的なフランス序曲のテンポの速い部分(常にフガート部分)で常に示されるのは、彼の典型的な独自の偉大な芸術で、それはユニークで複雑なものです。例えば、組曲第3番の第2楽章は非常に有名な弦楽器のみのためのアリアで、19~20世紀に実に様々な形に編曲され(いわゆる「G線上のアリア」)、現代ではスーパーマーケットのバックグラウンド・ミュージックにさえなる程です!ところがオリジナル版を聞くと実に美しく新鮮です。この楽章は「フランス的」な背景の中のイタリア様式の「孤島」的存在となっています。

ブランデンブルク協奏曲第5番では、バッハの別の様式的な側面を見ることができます。協奏曲であるこの作品は現在イタリアの表現形式(フランスの次に、国際的バロック様式後半のもう一方の側面)として考えられていますが、ここでもバッハは独自のアクセントで表現しています。実際にはこれはイタリア合奏協奏曲が派生したもので、一般的に二つのヴァイオリンとヴィオロンチェロをソログループとして使う代わりに、バッハはここではチェンバロ、フルート、8フィートのヴィオローネを使っています。第一楽章の終わり前に非常に長く、印象的で、名人芸的なチェンバロのカデンツァが存在し、チェンバロが明らかに主役です。この協奏曲は形式的にフランス舞踊組曲とは正反対に位置付けられています!

【Q3.】管弦楽組曲は1981年にCD録音し、31年後の2012年に再録音なさいました。この31年の間に、LPBの演奏はどのように変わりましたか?

【A3.】はい、我々は1981年にこの管弦楽組曲を録音し、ごく最近にも再び録音しています。前回からの録音の進化は明らかにLPBと私の仕事とコンセプトの進化を象徴しています。
1981年に「真の」フランス舞踊音楽である、ラモーの「イポリートとアリシー」より組曲を録音したところでした。そしてバッハの管弦楽組曲もまた(序曲~フーガを除いて)ほぼフランス式表現形式(作風)で書かれているのですが、私はこの典型的なフランスのオーケストラのサウンドに非常に魅了され、(当時持っていた若かりし情熱の中、)私はこの管弦楽組曲をイメージ通りに再現することを決意したのでした。当時自分の考えに対して非常に自信を持っていました。また非常に大勢の演奏者達(木管楽器を倍にさえし、組曲第4番ではオーボエが6人でした!)が私を非常に満足させてくれたことを覚えています。この、非常に複雑で洗練された曲を演奏することによって壮大な達成感とともに多くのことを学び、現在でもその仕上がりぶりはそれなりの説得力があると感じています。しかしながら、時間の経過とともに、バッハは実はそんなに大勢の演奏者を想定して作曲していなかったことを認識しました。木管楽器を倍にするようなことはせず、より少ない人数で演奏した方がより自然な透明性と、効果的な作品を表現できるのだと。

バッハのカンタータや他の大きな教会作品において当時の実行習慣を実感し、(2000年頃)より少ない演奏者を使用することに向けた私の進化を意識しました。今ではバッハの演奏スタイルを尊重するために、また可能な限り最も明確な方法で彼の音楽を引き出すために、(一般的には)多過ぎない演奏者を使用することの必要性を完全に確信しています。そうすることでメリットのみがあると感じています。ところで管弦楽組曲でバッハが通常よりもはるかに多い人数を使用したことは情報源に記されていません。これについては多くの憶測がこれまで存在しますが、オーケストラが大きかったという確実な証拠は示されていないのです!

私は今ではバッハの作品を、現代的な意味での、「指揮」をしないことでより大きな満足を感じています。(今ではヴァイオリンを弾きながら指揮します。)そして、聴衆の皆様がこうした私の見解を理解して下さり、楽しんでいることを実感しています!私の最近の演奏方法によってよりバッハの功績を感じることができ、それが私にとって最も重要なことでもあるのです。

バッハ、及び彼の作品と私の関係について:私の近年の著書である原題“Bleib bei uns, Bach”(“Remain with us, Bach”)で、1950年代私が子ども時代に音楽とどのように日頃接していたかを、そしてどのようにして証拠としてオリジナル楽器を使用するかというアイデアが、まだ若かった頭の中で発展していったかを記述しています。この本で早くから古楽に、特にバッハに魅力を感じはじめたことについて説明しています。バッハの器楽曲や声楽曲の演奏について多くの詳細な私の個人的考え、概念の変化と、併せてより一般的な注意事項も書かれています。現在の我々の時代こそバッハを必要としていると私は信じています。何故なら彼の芸術は、人間が表現することのできる最も高く、最も深い精神的なレベルの稀にみる現れであるからです。
この本の日本語版はこの数カ月のうちに発行されますが、オーケストラ「ラ・プティット・バンド」への寄付によってのみ取得可能です。2013年1月以来フランダース政府からの補助金が実質的ゼロにまで削減され、実にラ・プティット・バンドは存続の危機にあるのです。以来、LPBへの寄付を通して、この本の国際購読アクションによってオーケストラ「ラ・プティット・バンド」が生かされ続けているのです。また、この度の我々の日本でのコンサート・ツアーを通して肯定的な反応があることを期待しています。詳細についてはラ・プティット・バンドのウェブサイトで見ることが可能です。また、コンサート会場でも発表があります。

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